弁護士リーダー50 (4)

5 February 2026

UBS 証券の取締役法務部長、江島文孝弁護士とランチをご一緒しました。


江島様とは、気づけばもう20年近いお付き合いになります。長い時間を共有してきたからこそ分かるのですが、彼の印象は昔から一貫しています。落ち着いた佇まい。言葉は丁寧で、相手を構えさせない。必要な場面ではユーモアも交えつつ、決して場の空気を乱さない。


今でこそインハウス弁護士、とくに経営の一部としてのゼネラル・カウンセルの存在意義やバリューの高さは広く認識されていますが、江島様がインハウスに移られた20年以上前の日本では、そのような見方はほとんどありませんでした。むしろ、「事務所で成功しなかったから企業に行く」という偏見すらあった時代です。


その中で、実務とマネジメントの両面から地道に価値を積み上げ、周囲を納得させてきた。今、インハウス弁護士という職域が尊敬をもって語られるようになった背景には、こうした先駆者たちの積み重ねがあります。江島様は、まさにその流れを内側から静かにつくってきた一人だと思います。


お話の中で話題になるのは決断する力です。「決断力」と一言で言っても、その中身は複雑です。個人的には、江島様は“ノイズを消すこと”に長けたビジネスリーダーではないか、と思います。ステークホルダーの時間や意思決定プロセスに、余計なノイズを入れない。そのためには、何がシグナルで何がノイズなのかを正確に見極める必要があります。


それは時に、承認申請の仕方といった、ごく小さなことかもしれません。ただ、その一つひとつの積み重ねが信頼となり、結果的に「この人に任せれば大丈夫」という評価につながっていく。江島様の落ち着きの正体は、そこにあるように感じます。


リクルーターとして多くの弁護士と会っていると、この違いはすぐに分かります。意思決定に関与し、説明責任と結果責任を引き受けてきた人には、独特の重心があります。江島様は、まさにそのタイプです。


最近、江島様は若手弁護士からキャリア相談を受けたそうです。その際、ご自身がどれほど役に立てるのか不安に思う瞬間もあったと話してくれました。しかし実際に話してみると、弁護士として通ってきた道、面白さ不安、やりがいなど、今の若者とも多くの共通点を見出したとおっしゃいます。


若い人から見ると、江島様のような存在は「雲の上」にいるように見えるかもしれません。しかし、彼がいる場所と、今の若手が立っている場所は、決して断絶していません。同じ陸地の上を歩き続けた結果、今そこにいる。かつて自分自身が通ってきた道だからこそ、今の若手が置かれている状況をよく理解している。


今は、これまでの経験をもっと若い世代と共有する機会を持ちたいと考えているそうです。


肩書きではなく、権限でもなく、コミュニティに何を残せるかで価値を測る。

その姿勢が、江島様が弁護士の枠を超えたリーダーだと感じさせる一つの理由だと思います。