枠を超えて事業と並走する。

DS Law Office下平大輔弁護士(61期)

法律を志した理由を尋ねると、「決してドラマチックなものはないですよ」と笑って応える。


穏やかな口調で弁護士になった経緯を語ってくれる下平弁護士


家族や親族に弁護士や医師がいて、幼少の頃から感化されていたわけではない。ただ、誰かに指示され続けるより、自分の責任で仕事をしたい、そんな感覚は学生の頃からおぼろげながらあったという。学生時代、自分の将来を現実的に考えた時、専門性を持てる仕事であり、将来的に独立も可能な選択肢を考えてみたら法律があった、それだけだった。


「正直、最初は『仕事として成立するか』という視点が大きかったですね。いわゆる、社会のためだとか、弱者を助けるといったテレビドラマに出て来るような弁護士像を思い描いていたわけではなかったです。」


理想は大切だが現実はもっと大切。まずは自分の足で立てる力を身につける。そこからのスタートだった。


司法修習修了後、日系大手ではなく外資ローファームへ就職する。将来の独立を視野に入れながら、より早く実務の裁量に触れられる環境を求めたこと、そしてクロスボーダー案件に関わりたいという志向から、下平弁護士は最初の職場として外資系法律事務所を選んだ。実際に外資ローファームは彼に多くの学びを与えた。前例がないような最先端の案件、一流クライアントからのプレッシャー、徹底的に無駄が省かれ洗練された業務プロセス、妥協のない成果物を提供する一流サービスプロバイダーとしての意識が高く、実務面でも優秀な先輩や同僚たちに囲まれ、もがきながらも確かな手応えと成長を感じる若手時代を過ごし、企業法務・渉外法務に必要なスキルを徹底的に叩き込まれた。


一方で、次第に違和感も募っていった。


事務所における評価軸は、ビラブルアワーと売上。ビジネスとして合理的だが、やもするとクライアントの満足度より、内部の数字が優先される危うさを含んでいた。


「外資系事務所の厳しいノルマを毎年クリアしていく楽しさもありましたが、一方で、案件そのものの魅力よりも、『この案件はいくらになるか』から先に頭に浮かぶような感覚もあったんです」


多くの渉外弁護士として成功している人たちを間近で見ながらも、その成功モデルに説明できない違和感を感じながら、自分が思う理想の形が別のところにあることに気づくのに時間を要した。


転機の一つは、エネルギー関連企業でのインハウスとしての経験だった。


企業側に入ることで、見える景色が一変した。外部弁護士として部分的に関わっていた頃には見えなかった、意思決定の背景、社内調整の現実、事業全体の文脈。


「弁護士のアドバイスって、ビジネスの流れの中の『最後』に来ることが多い。でも本当は、もっと前から関われたほうがいいんですよね。」


その感覚は、後の独立に直結している。


独立を決めた理由は、自由になりたかったからではない。現実はむしろ逆−−−−小さい事務所であっても、経営者は売上、オペレーション、成果物、すべて自分の責任になる。誰かにノルマを課されるのではないが、自分で全てと向き合う。


「でも私はその方が健全だと思ったんです。」


組織の論理に縛られるより、自分で意思決定し、その結果を引き受ける。下平弁護士にとって独立とは、自由ではなく、判断と責任がペアとなる環境を創ることだった。



オフィスは都心のシェアード・オフィスに構える。

スタートアップが多く入る、活気の溢れる環境だ。



現在、彼が関わっている外資系企業による日本でのエネルギー関連のプロジェクトでは、用地調査の段階からクライアントと並走している。契約書が必要になってから呼ばれるのではなく、事業構想の初期から一緒に考え、プロジェクトや事業に対する理解を深める。それは従来型の渉外弁護士とは明らかに違う関わり方だ。


「本当は、こういう入り方のほうが自然だと思うんですよ。だって、クライアントの立場だったら、自分の会社の事業が分かっていない弁護士には頼まないと思うんですよ。」


彼の仕事は、単なるリーガルチェックでは終わらない。事業全体を理解し、リスクを指摘する守りの法務だけでなく『前に進むための選択肢』を提示する。その姿勢は、インハウス経験と独立後の実務を通じて磨かれてきた。


独立後もクライアント基盤を着実に増やし続ける下平弁護士にその秘訣を聞いても、返ってくるのは極めて地味な答えだ。


目の前の仕事を丁寧にやる。

信頼関係を築くには時間がかかる。

クライアントへの感謝と思いやりを忘れない。


事業として成り立たせるためには、採算や運転資金の確保が不可欠ではあるが、事業を拡大・熟成させるには短期的な売上に走るのではなく、長く続く関係の構築が必須である。


「弁護士業は典型的なサービス業なので、クライアントに良いサービスを提供するにはどうしたら良いかという視点を常に持ち続けなければならないと思います。」


彼が求めている仲間も、同じスタンスを持つ人だ。案件を回すだけの弁護士ではなく、クライアントの事業やニーズに本気で積極的に向き合える人。


AIや自動化が進む中で、単純なリーガルワークの価値は確実に下がっていく。だからこそ生き残るのは、人として事業に関わる力だと下平弁護士は見ている。そして、その価値観を共有できる人と次の仕事をつくっていきたいと考えている。