期待していた業務内容と違ったとき、どうすれば良いのか
新しいポジションを受けることは、キャリアにおける大きな決断です。新しいHR職への転職であれ、より上位のリーダーシップポジションへの昇進であれ、多くの人は採用プロセスで説明された職務内容、企業文化、キャリアパスが実際の仕事と一致することを期待しています。
しかし、実際に働き始めてみると、想像していたものと違うと感じることがあります。
例えば、戦略的な役割だと思っていたのに日々のオペレーション業務が中心だったり、面接で聞いていた企業文化と現実が大きく異なったり、期待していたほどの裁量権や影響力が与えられていなかったりすることがあります。
もし新しい職場で働き始めて間もなく、「本当に正しい転職だったのだろうか」と考えているのなら、決してあなただけではありません。これはHRマネージャーやHRビジネスパートナーから、HRディレクター、人事部長(Head of People)、CHROに至るまで、多くのHRプロフェッショナルが経験する問題です。
幸いなことに、入社直後の不安が必ずしも転職の失敗を意味するわけではありません。履歴書を更新したり、次の転職活動を始めたりする前に、まずは状況を客観的に評価し、一時的な問題なのか、本当に自分に合わない環境なのかを見極めることが重要です。
なぜ新しい職場は入社後に違って感じるのか
採用プロセスをどれだけ丁寧にしたとしても、限界があります。
面接では企業の一部しか見ることができず、実際の日常業務のすべてを知ることはできません。また、候補者自身も次のキャリアで実現したいことのみに注目して機会を評価する傾向があります。
そのため、期待と現実が完全に一致しないことはよく起こります。
SHRM(米国人材マネジメント協会)の調査によると、職務内容、マネジメント、企業文化、キャリア成長に対する期待とのギャップは、入社後の不満や早期離職につながる代表的な要因とされています。
採用時には理想的に見えたポジションでも、実際に働き始めると全く違った印象を受けることがあります。
ただし、それだけでそのポジションが自分に合わないとは限りません。重要なのは、大きな決断を下す前に状況を慎重に見極めることです。
このポジションは自分に合わないかもしれないと感じるサイン
新しい仕事には学習期間がつきものですが、特に注意すべき兆候もあります。
採用時に聞いていた仕事内容と大きく異なる
最も分かりやすい警告サインの一つが、面接で説明された内容と実際の業務内容に大きな差がある場合です。
例えば、
- 戦略的なHRポジションが実際にはオペレーション業務中心である
- 意思決定権限が想定より大幅に限定されている
- 面接で説明された重要プロジェクトが存在しない
- 報告ラインや組織構造が大きく異なる
多少の相違はどの企業にもありますが、大きな相違がある場合は詳しく確認する必要があります。
期待されている役割が不明確
優秀なHRプロフェッショナルほど、明確な期待値のもとで高い成果を発揮します。
数週間経っても優先順位や目標、成功の基準が分からない状態が続くと、大きなストレスとなり、本来のパフォーマンスを発揮しにくくなります。
オンボーディングが整理されていない
Gallupの調査では、効果的なオンボーディングが従業員エンゲージメントや定着率向上に大きく寄与することが示されています。
オンボーディングが不十分な場合、新入社員は期待値を理解できず、自信を持って業務を進めることが難しくなります。
以下のような状況には注意が必要です。
- サポートやトレーニングが不足している
- 上司との定期的な面談がない
- 職務範囲が曖昧
- 関係者との紹介が遅れている
- 最初の数か月の計画がない
適応期間が必要な企業もありますが、継続的であった場合は、成果を出す妨げになります。
企業文化が想像と違う
企業文化は入社前に最も見極めるのが難しい要素の一つです。
協力的で裁量のある環境を期待していたのに実際は非常に階層的な組織だったり、革新的でスピード感のある会社だと思っていたのに実際は慎重で保守的だったりすることもあります。
MIT Sloan Management Reviewの調査では、有害な職場文化は離職を引き起こす最も大きな要因の一つであり、給与以上に従業員の意思決定に影響を与えることが示されています。
HRプロフェッショナルにとって、文化との適合性はエンゲージメントや影響力、長期的な成功に直結します。
キャリアアップの機会が限られている
多くのHRプロフェッショナルは、経験の幅を広げたり、より戦略的な役割を担ったり、リーダーシップポジションへ進むために転職します。
しかし、キャリアパス、メンタリング、リーダーシップ開発の機会が採用時の説明より大幅に少ない場合は、そのポジションが長期的な目標達成に役立つかどうかを再評価する必要があります。
焦らず状況を見直す方法
転職後すぐに「この仕事は合わない」と判断してしまうことは、多くの人が陥りがちな失敗です。
新しい職場では、
- 新しいシステムに慣れる
- 人間関係を再構築する
- 組織の仕組みを理解する
- 新しい働き方に適応する
といった多くの変化があります。
そのため、不安や迷いを感じることは自然なことです。
感情的な判断ではなく、段階的に状況を評価しましょう。
最初の30日間
事業理解、人間関係構築、成功基準の把握に集中する。
60日後
当初の懸念が改善しているのか、十分なサポートや機会が得られているのかを確認する。
90日後
課題が一時的なものなのか、組織に根本的な問題があるのかを判断する。
その間、自分自身に次の質問を投げかけてみましょう。
- 一時的な課題に反応しているだけではないのか?
- 第一印象だけで判断していないか?
- 会社に十分な時間を与えたか?
- 12か月後もここで働く自分を想像できるか?
忍耐とは問題を無視することではありません。正しい判断を下すための時間を確保することです。
組織の問題なのか、文化の違いなのかを見極める
これは日本で働くHRプロフェッショナルにとって特に重要です。
日本には伝統的な日系企業から、多国籍企業、APAC統括拠点までさまざまな組織が存在し、それぞれ意思決定プロセスやコミュニケーションスタイルが大きく異なります。
例えば、
· 意思決定が遅いと感じるのは合意形成のためかもしれない
· 裁量が少ないと感じるのは協力を重んじるリーダーシップ体制の表れかもしれない
そのため、問題が組織そのものにあるのか、新しい環境への適応にあるのかを慎重に見極めることが重要です。
上司と率直に話し合う
適応期間を過ぎても不安が続く場合は、まずコミュニケーションを取るべきです。
多くの職場の課題は建設的な対話によって解決できます。
不満を伝えるだけではなく、理解を深める姿勢で話し合いましょう。
例えば、
- 優先順位や期待値の確認
- 将来の役割についての理解
- キャリア成長機会の相談
- 研修や育成ニーズの共有
- 短期・長期目標のすり合わせ
などが有効です。
優れたリーダーであれば、こうした対話を歓迎し、より透明性の高い説明をしてくれるでしょう。
場合によっては、問題だと思っていたことが単なるコミュニケーション不足だったというケースもあります。
転職を考えるべきタイミングとは
もちろん、我慢や対話だけでは解決しない場合もあります。
例えば、
- 仕事内容が大きく異なって説明されていた
- 継続的なカルチャーの不一致
- 経営陣への信頼が持てない
- 成長機会がほとんどない
- 業務量が持続不可能
- 改善を求めても状況が変わらない
こうした場合は、新たな機会を検討することも合理的な選択です。
特にHR Director、Head of People、CHROなどのシニアリーダーにとっては、キャリアへの影響が大きいため、感情ではなく事実に基づいて判断することが重要です。
なお、多くの採用責任者は「すべての転職が成功するわけではない」ことを理解しています。
短期間での離職が一度あったとしても、その理由をプロフェッショナルに説明できれば、大きな問題になることはほとんどありません。
初期の不安をより良いキャリア判断につなげる
新しい仕事が期待通りではなかったと気づくことは、決して気持ちの良い経験ではありません。
しかし、優秀なHRプロフェッショナルほど感情的に反応せず、
- 状況を理解する
- 事実を集める
- オープンに対話する
- 長期的視点で判断する
というプロセスを踏みます。
時間が経つにつれて不安が解消されることもありますし、次のキャリアで本当に求めるものを明確にしてくれる貴重な経験になることもあります。
Just HRでは、日本およびAPAC地域におけるHRリーダー向けのエグゼクティブサーチを専門としており、キャリアの意思決定をサポートし、志向やリーダーシップスタイル、専門性に合った機会を紹介しております。
現在のポジションが本当に自分に合っているのか悩んでいる方、あるいは次のリーダーシップキャリアを検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。



